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痔は、大人だけの病気ではありません。 小さな子供にも、お尻の病気は存在します。 |
「痔」って、そもそも何なの?? 「痔(じ?ぢ?)ってなに??」広告などで、ひらがなで書くと、「ぢ」と認識してい方は意外と少なくないのですが、それは間違いです。正確には「じ」です。ちなみに、「ぢ」で漢字変換しても、「痔」は出てきません。 薬局などで、赤く太く装飾された「痔」は、出血を伴う事が多いので、「血がでる」という意味合いも込めてかわかりませんが、血の「ち」に、濁点を付けて「ぢ」とした方が理解しやすいだろうという観点から、「ぢ」という表現になっていると、個人的に解釈しています。 肛門には様々な病気が存在するのですが、「痔」とは非常に便利な言葉で、専門としている人以外にとっては、「お尻の病気の総称」=「痔」です。膨らんでいれば、その膨らみの原因がなんであっても「イボ痔」、切れて痛くて、出血していれば「さけ痔、切れ痔」、穴みたいなものがあれば「あな痔」、といった具合に非常に便利な言葉です。 ですが、そんな簡単に病気を判断、診断できるようなものではありません。医師であっても、この領域を専門としていなければ、ほぼ素人同様と考えても過言ではなく、今の自分の肛門に、何かしら困った事があるのならば、この領域を専門とした医師の判断を仰ぐ必要があります。 もし、何かしらの病気で通院している医師が外科医であっても、「私は外科医ですが、肛門の病気のあまり専門的な内容は分からないので、医師を紹介します」と言ってくれる医師は、本当に正直だと思います。かかりつけの医師に、現状の困ったお尻の症状を訴えてみたところ、このように言われたのであれば、素直に従うべきです。 専門的知識があまり無いにも関わらず、何でもかんでも自分で診たがり、お尻の症状を訴えている患者さんには、痔に効く軟膏や坐薬を処方するだけで、その薬を使用してもなかなか改善しないときに、専門医を紹介しないという行為は、あまり好ましくありません。 そういった状態がダラダラと続いている場合は、自分から積極的に、知人から情報を得てみたり、インターネットなどから情報を得て、肛門を専門とした医療機関を探して受診した方がよいと思います。 さて、本題に入りましょう。 「大人の病気」という認識のある「痔」ですが、実は乳児期から「痔」は存在します。ただ、ここでいう「痔」は、先ほども言いましたが、痔は「素人の言うお尻の病気の総称」なので、そんな大雑把な枠組みは全て捨てて、これを読んで正しい知識を得て下さい。 また、ここでは「可能性のある病気」としか説明できませんので、個々の状況に関しては、当然ですが、専門とした医師の診察を受けないとハッキリした事はわかりませんので、ご了承ください。
当然、本人は母乳を飲んでいるような状態なので、何も言えません。オムツを交換する時に親が何かしらの異常を見て、肛門科を訪れます。親が訴える症状で最も多いのは「出血」です。肛門からの出血を「下血;げけつ」と言いますが、この症状は、どの年齢層においても最も多い訴えです。当然、年齢によって病気の種類は異なりますが、乳児期に最も多く見られるのは「切れ痔」いわゆる裂肛です。 母乳を飲んでいるこの時期、基本的に便の性状は下痢便で、硬い便で肛門の一部が切れるという事はあまり多くないのですが、肛門周囲は非常に敏感でデリケートな場所で血流も多く、排便するために伸縮を繰り返し、腸の粘膜と皮膚との移行部などもあり、普通に排便していても、わずかに出血することは珍しくありません。大人でもティッシュで拭いた時に血が付いたう経験が無いいという方は殆どいないと思います。 この時期のいわゆる赤ちゃんでも、彼らなにり、頑張って出した時にちょっと出血する事は珍しくありません。それを親が目撃したら、多かれ少なかれ心配になるのは当然です。 ですから、この時期の出血の殆どは切れた事による「切れ痔」いわゆる「裂肛」です。多くの場合は、注入する軟膏などを処方して、薬で様子をみる事が多くあります。 次に見かける病気は、「腫れ」、「発赤(赤み)」のイボです。 肛門の脇に、ニキビのような赤い膨らみができる事があります。「肛門周囲膿瘍」の可能性があります。内容物は「膿」で、日ごとに大きくなり、押すと痛がります。大人の場合は肛門の前・後方にできる事がやや多いのですが、乳児の場合には、肛門の左右にできる事が多いようです。数日経過すると、痛み、赤みは増強・拡大していきます。 そのうち、自然に膿の溜まりが皮膚を破って自然に流出(自壊;じかい)して、痛みが嘘のように楽になるパターンもあれば、痛みが持続し症状が強くなり肛門科に連れてくる方もおります。膿が溜まっていると予想され、膿を出すことができそうであれば、そのような処置を施します。どちらの場合も、それまで膿が溜まっていたスペースが索状に残る事があり、この病態を「痔瘻;じろう」といいます。 大人になってから生じた痔ろうは、原則的に放置しても治らないので、手術による痔ろうを治す手術必要になる事が多いのですが、乳児で発症した痔ろうの治療は、とりあえず膿を出すまでで一旦終了します。 この時期の発症した痔ろうは、大人の痔ろうとは性質がやや違い、自然に治癒する可能性があるので、もし消えてしまえば、その後本人が成長して物心ついても、特に肛門に違和感を残す事もなく自然に治癒したという事になるので、その件に関して本人が肛門科を訪れる事はないという結果になります。 しかし、中には、痔ろうが自然消滅せずに、10年や20年が経過してから、同じ場所に再度膿が溜まって、痛みを生じる事もあります。親から聞かされた話、「あなたは昔、お尻の周りに膿が溜まった事があったのよね」と言われた経験があれば、痔ろうが自然に治癒せずに、再発して、やはり痔ろうが自然消滅していなかった、という結果になります。 さて、このような「乳児痔ろう」ですが、非常に極端な男女差があり、ほぼ100%男児です。女児であれば、学会での症例報告モノです。理由ははっきりとわかっておりません。 大人になってから肛門周囲膿瘍が再発したのであれば、痔ろうは自然治癒しないのが原則なので、専門とする医師に診てもらい、痔ろうが存在するのであれば、手術による治療が必要になります。
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この時期になると、自己主張もできるようになってきますので、自ら「お尻が痛い!」、「ウンチする時に痛い!」と訴える事ができるようになってきます。 この時期も、やはり一番多いのは、出血(下血)です。お尻を拭いた時に血が付いていたり、便器の水が赤なっていたら、さすがに親に言うでしょう。そんな事を言われた親の立場としては、どうしていいのかわからない状況になると思うのですが、とりあえず、深呼吸して落ち着いて考えてみてください。まずどんな病気を何を考えますか? 大人なら、がんなどの悪い病気を一番に考えるかもしれませんが、この年齢で「がん」を一番に考える必要はありません。最も可能性が高いのは、肛門の一部が切れて裂けた、いわゆる「切れ痔」、裂肛です。 子供の便を見て驚いたことありませんか?「私のより太い!!」 どうしてあんなに太いのが出るんだろう??と。大人顔負けの太い「立派」なのを目の当たりにした時、あの小さな体のどこからあんなに太いのが出るんだろう?と思わせるような太い便が出る事があります。余談ですが、きっとこれを読んでいる大人の方も、幼少の頃いは、大人顔負けのを出していたのです。 笑い話ではないですが、あまりに太くて長くて、水洗トイレで一回では流れず、半日から一日放置され、それまでに水分を吸収して柔らかくなって、ようやく流れたという話もときには聞く事もあります。恐るべきですよね! この時期の出血の殆どは、肛門の一部が切れた事による症状なので、まずは薬を使って様子をみます。もしそれでも症状が改善しない場合には、肛門ではなく、腸の病気なども考えないといけないのですが、ここから先は、個人のこれまでの症状の経過で変わってしますので、個々に判断する必要があります。ただ、悪性腫瘍である可能性は極めて低いという事は言うまでもありません。 また、乳児期の項目で述べた肛門周囲膿瘍や痔ろうがこの時期に発症した場合も、やはり切開して排膿だけしたのち、手術が必要な痔ろうの治療は、大人になってからになります。
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この年齢になってくると、大人とほぼ同様になります。特別この時期に多いとい特徴もなくなり、今まで上では述べていなかった「痔核」、いわゆる「いぼ痔」が加わります。
つまり、痔核の成長にはある程度時間がかかるという事です。
切れ痔は、太い便をして、肛門の拡張が限界を超えた時に発症する訳ですから、一瞬にできます。
肛門周囲膿瘍は、肛門に近い皮膚と粘膜の移行部にある小さな分泌腺に菌が侵入し、増殖する事で発症しますので、「日」とい単位で症状が強くなります。
一方、痔核は、排便時に肛門に負担がかかった事により、肛門の皮下の血管が切れ、血豆めよって形成された「血栓性外痔核」は、痔核の中では珍しく、「昨日できた」とか、「何曜日からできた」といった具合に、非常に短期間で発症します。
それ以外の痔核は、「数年~数十年」という時間をかけて形成されるので、小学生までのような年齢で発症することはあまりありません。痔核は、そのサイズが大きくなったり個数が増えると、「脱肛」や、「肛門脱」といった名称になり、存在感が大きくなり症状も強くなってきます。
あまり大きくないうちに治療をすれば、治療を施す側も、受ける側も楽なのですが、なかなか場所の問題もあり、「一線」を越えないと肛門科を受診しないという患者さんは沢山おります。ぜひ、ほどほどのうちに受診することを推奨します。、
さて、ここではヒトの成長によって痔核の種類が違う事を述べてきました。
大人になると、生活スタイルも多様になり、痔の種類も増えてきます。また、肛門という場所は皮膚でもあり、直腸の粘膜がすぐ上にあり、女性では膣にも近い場所でもありますので、それらの領域(皮膚科・外科・婦人科)の病気が肛門周囲に生じる事もあります。
なかなか受診にハードルの高い診療科と思う方もおられると思いますが、どのような病気も早いうちがよいので、なにか不安なことがあったら、躊躇する事なく専門とした医療機関を受診する事をお勧めします。